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令和2年@短答:監査論問題19について

 

2010年代最大の疑義問、監査論問題19の解説については、「基準に基づく解説」と「理解に基づく解説」を行っております。

 

基準に基づく解説

 

 

理解に基づく解説

 

 

以上の動画解説を踏まえ、アカ凸では問題19の正答は6番が有力だと判断しています。

 

この点に関して、下記のご質問を頂いております。

 

【ハンドルネーム(匿名希望も可)】
 クレセブン
【ご質問、ご相談事項】
 はじめまして。
先日、短答式試験を受けた者です。結果は59.2%でした。
ただ、監査論の「問題19」の解答次第で、60%を超えることもあり、解答は4もありと思え、たまらずメールした次第です。
私は、イの脚は○と判断しました。最新の監基報701を再度見て確認もしましたが、このイは、KAMの内容となる部分についての理解も聞いているのではと思いました。
KAMの内容は、監査人とコミュニケーションしたものとなりますが、A19に「特検リスク以外に識別しているRMMが高い領域への監査人の対応について、監査役等とコミュニケーションを行うことがある。」と書いてあります。
そこで、特検リスクそのものとは違い、この部分の監査人の対応については、普段はコミュニケーションを行わなくてもよいものと解釈しておりました。
よって、イの脚は○としか判断できなかったのです。ただ、私の解釈が間違っているのでしょうか。どうしても納得がいかなかったため、お伝えした次第です。
お返事は、先生の更新されたブログの内容で理解しますので、個別に頂かなくてかまいません。
突然のご意見、お許し下さい。

 

クレセブンさん、ご質問ありがとうございます。

 

ここで、問題となっている正誤判定肢のイとエについて、下記に記載します。

 

イ.監査人は,計画した監査の範囲とその実施時期の概要について,監査役等とコミュニケーションを行わなければならないが,これには,特別な検討を必要とするリスク以外に識別している重要な虚偽表示リスクが高い領域への監査人の対応は,必ずしも含めなくてもよい。

 

エ.監査人は,財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性がある不正への経営者の関与が疑われる場合には,監査役等への報告及び監査を完了するために必要となる監査手続の種類,時期並びに範囲について協議しないことがある。

 

イが○なら、答えは4番。(以下、4案と呼称)

 

エが○なら、答えは6番。(以下、6案と呼称)

 

2019年12月13日時点では、受験学校によって答えが真っ二つに分かれている状況です。

 

イを○とする見解(4案)

 

まずは質問者さんの見解から。

 

監基報701「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」A19項の記述を根拠にしてくれています。

 

下記がA19項の記載文言です。

 

A19.監査人は、識別された特別な検討を必要とするリスクについて監査役等とコミュニケーションを行うことが求められている(監基報260第13項参照)。また、監査人は、特別な検討を必要とするリスク以外に識別している重要な虚偽表示リスクが高い領域への監査人の対応について、監査役等とコミュニケーションを行うことがある(監基報260のA12項参照)。

 

上記、後段のまた書きの文書を反対解釈すると、

 

特別な検討を必要とするリスク以外に識別している重要な虚偽表示リスクが高い領域への監査人の対応について、監査役等とコミュニケーションを行わなくても良い。

 

となります。

 

この解釈を前提にイの肢を判定するならば、イは○だという結論になります。(4案を正答としている受験学校の見解がこちらだと思います。)

 

まさに、仰る通りです。

 

では次にイを×とする見解について確認します。

 

根拠は3つあります。

 

イを×とする見解(6案)

 

(1) 基準をベースにした考察

 

イの誤りの根拠は監基報701ではなく、監基報260「監査役等とのコミュニケーション」13項とA13項に基づいています。

 

13.監査人は、計画した監査の範囲とその実施時期の概要について、監査役等とコミュニケーションを行わなければならない。これには監査人により識別された特別な検討を必要とするリスクが含まれる。(A10項からA15項参照)

 

A13.コミュニケーションを行う事項には、例えば、以下が含まれる。

 

特別な検討を必要とするリスク以外に識別している重要な虚偽表示リスクが高い領域への監査人の対応(以下、@)

 

・ 監査に適用される重要性の概念(以下、A)

 

まず13項より、監査役等とのコミュニケーションには特別な検討を必要とするリスクが含まれることが分かります。

 

次に、A13項に監査役等とのコミュニケーションが必要な事項として、「例えば、以下が含まれる。」と記載した上で、@を例示しています。

 

ということは、@は監査役等とのコミュニケーションが必要な事項なのではないか、

 

というのが、イを×とする見解の根拠になっています。

 

解説動画でも言及しましたが、「果物には、例えば、りんごが含まれる。」

 

と言った場合、「りんごは果物に、必ずしも含めなくてよい。」とする肢は誤りだと言えます。

 

つまり、コミュニケーションを行う事項に@が例示されており、そのコミュニケーションは監査役との間で必ず行うべきもの

 

という解釈を前提にイを誤りだと判断しています。

 

 

(2) 実務をベースにした考察

 

監基報260のA13項にはAとして、「監査に適用される重要性の概念」という記述があります。

 

つまり、監査上の重要性については監査役等とのコミュニケーションが必要な事項なのです。

 

だとすれば、特別な検討を必要とするリスク以外に識別している重要な虚偽表示リスクが高い領域への監査人の対応について、コミュニケーションを図らなくても良いというのはヘンな話です。

 

監査人「うちが考える重要性は○○百万円です。」

 

監査役「ふむふむ。では、特別な検討を必要とするリスク(超重要な虚偽表示リスク)以外に、貴監査法人が考える重要な虚偽表示リスクについての対応をご教示下さい。」

 

監査人「コミュニケーションが必要な事項ではないので、お答えできません。」

 

監査役「???」

 

っていうのは、やはり違和感があります。

 

重要性を指摘している以上、監査人が重要だと考える虚偽表示リスクに対してどのような対処策を講じたのかは、監査役としては知りたいところです。

 

とすれば、「重要」と名が付くものについては、監査役との間でコンセンサスを取り、情報の共有化を図るべきではないか、と思うのです。

 

 

(3) 監基報701の適用シチュエーションをベースにした考察

 

監基報701の5項では、下記のように記述しています。

 

5.本報告書は、法令により監査報告書において監査上の主要な検討事項の記載が求められる監査において適用される。

 

これは逆説的に、

 

法令により監査報告書において監査上の主要な検討事項の記載が求められる監査以外は、この監基報は適用しない。

 

ということを示唆しています。

 

問題19は「監査役等とのコミュニケーション」に関する次の記述のうち,正しいものの組み合わせとして最も適切な番号を一つ選びなさい。

 

と書いてあり、「法定監査により監査上の主要な検討事項が必要な場合の監査役等とのコミュニケーション」に関する次の記述のうち、、、、

 

とは書いていません。

 

実際に一つ前の問題18が「監査上の主要な検討事項」に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。

 

と記載されていることを考えると、問題19の出題者は「監査上の主要な検討事項」を前提にした作問ではなく、純粋に監基報260の「監査役等とのコミュニケーション」を念頭に置いて考えて下さい、と解釈するのが自然な気がします。

 

だから、監基報701の適用ありきと考えるには前提条件が足りないのでは、と思うわけです。

 

以上ここまでが、イの正誤に関する4案と6案の見解です。

 

そして最後に、エの正誤についても確認しておきます。

 

個人的には、イの○×よりも、エを○と判定する根拠の方が証明力が強いように思います。

 

改めて、エの肢を再掲します。

 

エ.監査人は,財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性がある不正への経営者の関与が疑われる場合には,監査役等への報告及び監査を完了するために必要となる監査手続の種類,時期並びに範囲について協議しないことがある。

 

不正が関与しますので、エの根拠規定は監基報240「財務諸表監査における不正」40項になります。

 

40.監査人は、不正又は不正の疑いに経営者の関与が疑われる場合、監査役等とコミュニケーションを行い、監査を完了するため必要となる監査手続の種類、時期及び範囲についても協議しなければならない。法令によって禁止されていない限り、当該監査役等とのコミュニケーションは求められる。(A56-4項、A58項からA60項参照)

 

これは、法令によって監査役等とのコミュニケーションを図ることが禁止されるシチュエーションがあることを意味します。

 

つまり、エの肢の文末にある通り、「協議しないことがある。」とする記載は正しいと判断できます。

 

以上の理由から、アカ凸としては、やはりイを×、エを○とする見解(6案)が有力だと考えています。

 

とはいえ!!!

 

質問者さんのように、新しい試験範囲である監基報701「監査上の主要な検討事項」をしっかりと読み込んで対策してきた受験生にとっては、この正誤判断はあまりにも酷だと思います。

 

個人的には、4と6をともに正答とする措置を講じて頂くか、問題19自体に不備があるため、全員正解とするといった対応を、公認会計士・監査審査会には強く希望します。

 

そうじゃないと、頑張って勉強してきた受験生が報われないですよ。

 

 

クレセブンさんへ。

 

もし、問題19が原因(正答が6)かつ合格ボーダーが60%になって、短答試験に落ちてしまった場合、私が焼き肉をご馳走します!

 

どちらにお住まいか分かりませんが、会いに行きますよ。

 

良かったら連絡下さい。

 

論文試験に合格するその日まで、私はあなたの味方です。

 

 

2019年12月13日 公認会計士 松本 翔

 
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